開催地名で議題がわかる広島サミットは空前絶後!

それぞれのG7サミットをどう呼ぶか。政府公認の呼び方をするのであれば,沖縄サミット(2000年)や洞爺湖サミット(2008年)は,それぞれ「九州沖縄サミット」や「北海道洞爺湖サミット」としなければならない。

一方,欧米諸国で開催されるG7サミットは,一般に「都市名+サミット」で呼ばれることが多い。例外はいくつかある。広島サミットの前年(2022年)とさらにその7年前(2015年)の会場はドイツ・バイエルン州のエルマウ城で,どちらもエルマウ・サミットと呼ばれている。また,広大な敷地をもつスコットランド地方のグレンイーグルス・ホテルが開催地に選ばれたときは,グレンイーグルス・サミット(2005年)と名づけられたし,アメリカ大統領の別荘であるキャンプ・デービッドで開催されたときの呼称はキャンプ・デービッド・サミット(2012年)だった。さらに,アルシュ・サミット(1989年)は,フランス革命200年を記念して建てられたばかりの新凱旋門(アルシュ)が会議場になったことに由来する。パリ・サミットでもよかったはずだが,そうは呼ばれていない。

いずれにしても,サミットの呼び方は,ピンポイントの開催場所あるいは基礎自治体名なのである。なので,イタリアのタオルミーナで開かれたサミットはタオルミーナ・サミット(2017年)であって,シチリア・サミットやシチリア・タオルミーナ・サミットとは呼ばない。エルマウ・サミットもバイエルン・エルマウ・サミットとは呼ばない。基本的に広域自治体はサミットの名称に入れないのだ。

ところが,日本だけは事情がちがう。当時ほぼ同時期に実施されていた外相会合と蔵相会合の開催地を,サミット誘致で沖縄と争った福岡市と宮崎市に振り分けために,沖縄サミットの正式名称は「九州沖縄サミット」にされた。欧米の基準なら「名護サミット」が妥当である。また,洞爺湖サミットには「北海道」がついた。北海道が積極的にサミット誘致を行ったためなのだろう。

ついでに言えば,伊勢志摩サミット(2016年)も欧米の基準からすれば「志摩サミット」である。G7首脳は安倍首相の案内で伊勢神宮をそろって訪問したが,そこで会議はしていない。議長国の「伊勢」にたいする思い入れがあっての「伊勢志摩サミット」なのだろう。

サミットの呼び方は,開催場所あるいは基礎自治体名が一般的!

さて,「広島サミット」だが,名前の付け方については問題ないものの,別の点できわめて例外的な名称になっている。開催地名だけで議長国が意識している議題がわかるケースは,サミット史上初なのだ。「HIROSHIMA」は核不拡散や平和を願う街として,広く世界に知られている。ロシアのウクライナ侵攻が続くなかで,サミットが広島で開催されるというのは,もうそれだけで何を話し合うかも,その結論の方向性もわかる。開催地の名前じたいが政治的意味合いをもったメッセージになるのは,当然,過去のサミットにはなかった。

実際,広島サミットでは,核保有4か国(米英仏と招待国のインド)を含め,主要国,招待国,そして国際機関の首脳たちが爆心地を訪れ,記念撮影も平和記念公園で行われた。爆心地に立つリーダーたちの映像は,それだけでG7の政治姿勢を世界にアピールできたはずだ。

開催地に広島市を選んだのは,ここに選挙区をもつ岸田首相である。岸田氏は外務大臣時代の2016年にG7外相会合を広島で(広島サミットと同じホテルで)開催し,また伊勢志摩サミットで来日したオバマ米大統領の広島訪問を実現させた。広島サミットが岸田首相の強い思いで実現したとすれば,日本はG7サミットの議長国の順番が回ってきたときに,たまたまにせよ,核不拡散を心から願う首相をもつ幸運に恵まれた,と言ってもよいのではないか。

開催地名が政治的インパクトをもったサミットは広島サミットだけ!