広島サミットからちょうど1年後の2024年5月19日,平和記念公園の原爆資料館の出口を出てすぐのところに「広島サミット記念館」がオープンした。自治体が中心となって次の日本のサミット開催までの期間限定で設置したプレハブの建物だ。こうした記念館は東京以外で開催されたサミットには付き物だが,期間限定は初めてだ。

G7首脳が会議で使ったテーブルとイスも展示されている。宮島の旅館で行った安全保障に関するセッションで使われたものだ。いかにも高価なしつらえだが,ロープがあって座ることはもとより,触れることさえできない。座れれば多くの人が記念写真を撮って周囲の方たちに見せるだろうに,とちょっと残念に思った。
注目すべき展示は各首脳が原爆資料館の見学直後にしたためた色紙で,各国リーダーの平和を願う気持ちがつづられている。G7首脳のほか,G7配偶者のものとウクライナのゼレンスキー大統領のものがあるが,残念ながら招聘国首脳の言葉はなかった。インド,インドネシア,ベトナム,韓国,ブラジルなどからは観光客も多く広島を訪れるだろう。ならば,自国のリーダーが平和について書いた色紙を読んでもらったらよい。そもそも書いてもらえてないのかもしれないが。

地元向けが意識されたためか,展示では首脳に提供された食材や土産,あるいは開催までの住民の応援活動や子どもたちの学習の様子などが紹介されている。一方で,会議日程はパネル展示に書かれているものの,成果についての言及はない。核なき世界をめざすことを盛り込んだ「広島ビジョン」についても,不十分とする意見に配慮して展示が見合わされたと聞いた。不快に思う人がいるのであれば展示を控えることも必要かもしれないが,G7サミットが特別文書を出したという事実は変えられないのだから,多様な評価があっても,見学者が考える機会として掲示すべきだったのではないか。

建物は景観に配慮して地味なものとなった。とはいえ,広島サミットの記録を見ようという訪問者はそう多くはいないだろうから,建物の横にロゴを入れるなど,もう少し目立つための工夫をしてもよかったのではないか。
広島サミットの成果をきちんと認識してもらうための工夫についてのこうした苦言は,自治体の方にもお伝えし,テレビ新広島のニュースの中継でも申し上げた。サミットに思い入れのある研究者ならではの見方なのだろうが,成果文書に注目するようなまじめな展示に徹する気がないのなら,イスに座ったり,首脳たちの等身大パネルの横に立ったりして,記念撮影ができるなど,もっと遊べる記念館にしてもよいように思った。

