「グローバルサウス」という概念が流行っている。「途上国」という言い方が「目指すは先進国」とのニュアンスを持つことへの反発からなのか,あるいは「新興国」を北半球に位置する中国・ロシアと南半球のインド,ブラジル,南アフリカなどに区分したほうが,現状を説明するのに適切だと考えられたのか。言葉の由来は判然としないが,おそらく後者が正しいのだろう。
たしかに,「グローバルサウス」の定義については,中露と日米欧が仲間になってほしいと願って支持を奪い合う「ちょっと影響力のありそうな新興国・途上国の集まり」のことを指すとすればわかりやすいかもしれない。いわゆる「最貧国」のことは,AU(アフリカ連合)のような地域機構としてはともなく,個別にはあまり意識されていないように見えるからだ。

「グローバルサウス」とは,中露と日米欧が支持を奪い合う新興国・途上国の集まり!
さて,この「グローバルサウス」の代表格はインド,ブラジル,南アフリカなどで,いずれもG20のメンバー国である。G20はもともとG7が新興国との協議の必要から作った「金融・世界経済に関する枠組み」である。おそらく,「G20のうち中露でもG7でもない南半球の国々」が「グローバルサウス」という名を与えられて,国際政治の駆け引きで重要なポジションを得てきている,という現状認識が広まってきているのだろう。
とはいえ,「グローバルサウス」のうち,インド,ブラジル,南アフリカは中露とBRICSと呼ばれるグループを形成しつつも,一方でG7サミットに招かれた際には日米欧との交流に出向いてくる。オーストラリアや韓国(サウスではないが)はもちろんG7寄り,「先進国クラブ」とあだ名されるOECD(経済協力開発機構)に加盟しているトルコや2024年に加盟交渉を始めたインドネシアも,メンバー入りできるならBRICSではなくG7を選ぶにちがいない。事実,BRICSが2024年1月に加盟国を5か国(サウジアラビア,イラン,エチオピア,エジプト,UAE)増やした際,インドネシアやトルコは加わっていない。イスラム教国にも民主化の程度の強弱はある。政治リーダーを選挙で選ぶインドネシアやトルコは,民主政治や自由経済についての価値観がよりG7寄りだと言ってよい。
ということは,インド,ブラジル,南アフリカだけでなく,オーストラリアや韓国,さらにはインドネシアやトルコもG7の新規メンバーの候補国になりうるということだ。そう思ってのことか,2023年の広島サミットで,G7は「グローバルサウス」への「気候変動に強い循環型経済への移行支援」を約束した(首脳宣言)。

G7に加わる可能性をもった国はたくさんある!
いまはゲスト国としてサミットに参加するのが,G7にとってもグローバルサウスにとっても「心地よい距離感」なのかもしれない。だが,G7は早晩,Gのあとの数字を増やしながら,最終的にはG10かG12の方向に向かうにちがいない。上記の地域大国のうち,英語国でITにも積極的なインドが最有力だろうが,実際にどの国からになるかはまだ見通せない。いずれにしても,柔軟なサミット・メカニズムは,Gのあとの数字を増やしながら,世界の政治経済の動きに今後も影響力を行使し続けるとわたしは確信している。
