G7は恒常的な国際政治メカニズムである!

G7サミットの「サミット」とは「山の頂上」である。国政のトップリーダーが集まる「頂上会談」を意味する。トップが集めれば「サミット」なのだから,今では組織の頂点に立つリーダーたちの会議の比喩として,あちこちで普通に使われている。区別するために,日米欧の政治リーダー会議については「G7サミット」と「G7」を付けて呼ぶのが一般的だ。

ただし,ある年のG7の首脳会議のことは,「広島サミット」のように,開催地に「サミット」を付けて呼ぶ。これはこれで正しいのだが,問題は「G7」が「国家連携の枠組み」,さらには「国際政治のメカニズム」として機能していることに目が向かなくなってしまうことだ。首脳会談であるサミットが「G7」の活動のすべてだと勘違いされてしまうと,G7サミットの真価に気づかない。悪くすれば,首脳会談のお祭り的側面ばかりがクローズアップされることになる。

「G7」の枠組みでは各種の閣僚会議が開催されている。よくニュースになるので知っている人も多いだろうが,最も頻繁に開かれているのは「G7外相会議」と「G7蔵相・中央銀行総裁会議」である。首脳会談は基本的には年1回だが,外相や蔵相や年に複数回の開催が普通になっている。ほかにも何種類かの閣僚会議や担当者会議が必要に応じて開催されている。

「サミット」は「G7」の活動の1つにすぎない!

G7の議長国は7か国の持ち回りである。1975年の第1回サミットがフランスで開催され,2回目がアメリカで,などとなったことから,現在も1巡目の慣例を踏襲して,フランス,アメリカ,イギリス,ドイツ,日本,イタリア,カナダの順に1年交代でめぐってくる。

G7の議長国は1月から12月までの1年間,議長国としてG7の活動をリードする。緊急事態が発生すれば対応を協議する閣僚会議などを招集する。「G7」はグローバル・ガバナンス(地球統治・地球管理)における危機管理機能の一翼を担っているといっても過言ではない。

もちろん,それが常に有効であるとはかぎらない。ただ,それを言えば,国連だってグローバルな問題の解決に常に成功しているわけではないのだから,問題解決にかかわろうと関与する点だけでも,国際政治を論じる上では無視できない存在になっている。

しかも,ほかの国家連携とちがって,「G7」はたんなる加盟国の「国家連携(政策協調)の枠組み」を超えた「国際政治のメカニズム」として機能している点を指摘できるだろう。「G7」の公式文書を見ると,他の国への働きかけや既存の国際機関の改革についての意見などが盛り込まれている。内々の政策協調にとどまらず,「G7」での合意はしばしば国際機関を動かし,またそれらを通じて実施されていく。国連のように独自の官僚機構がないので当然なのだが,「実働部隊」が既存の国際機関となることも多い。カネとクチを出す,というと言い方が悪いかもしれないが,いわば「国際政治のメカニズムを動かす司令塔」のような役割を果たそうとしている点を見逃すわけにはいかないだろう。

G7はたんなる国家連携の枠組みを超えた恒常的な国際危機管理メカニズム!

1つ例をあげておこう。ロシアのウクライナ侵攻は2022年2月24日に発生した。これに先立つ2月19日,G7は外相会合を開いてロシア軍の配置に関する「重大な懸念」を表明し,侵攻した場合にロシアに課せられる経済制裁が厳しいものになることを予告した。さらに22日にもG7外相は電話会合を行い,ロシアによる「ドネツク人民共和国」と「ルハンスク人民共和国」の独立承認について,これを国際法違反であると非難した。

侵攻が始まるとG7はただちにオンラインで首脳会合を開催した。G7首脳は「プーチン大統領は欧州大陸に再び戦争を持ち込んだ」と非難し,協調してロシアに対する経済・金融制裁の実施に踏み切ることで合意した。これを受けて,2月26日には国際的な決済ネットワークSWIFTがロシアのいくつかの銀行を締め出す措置を実施した。

その後,2022年6月のエルマウ・サミット開催までに,外相会合は6回(2月27日,3月4日,3月17日,4月7日,5月1日5,6月24日),首脳会合は3回(3月24日,4月7日,5月9日)開催され,いずれもウクライナへの人道支援やロシアへの経済制裁について具体策を協議し,発表してきた(そのほか3月11日にG7首脳名でロシア非難声明を発出)。この間,国際組織で明確にロシアへの制裁を決定・実行したのはG7だけであった。言うまでもなく,ロシアが常任理事国として拒否権を持つ国連の安全保障理事会は,まったく機能できなかったからだ。国連総会では停戦の呼びかけや民間人保護が決議されたものの,ロシアにとっては痛くも痒くもなかったはずだ。

なお,エルマウでの首脳会合では,この問題を討議するセッションにウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで参加した。議論を受けてG7は「ウクライナ支援に関する声明」ならびにロシアに対する制裁に関する「付属文書」を発出した。声明でG7はメンバー以外にも参加を呼びかけて経済制裁を強化する姿勢を示した。

国際的な危機に際し,発生前から政治的働きかけを行い,発生後は断固たる態度で制裁を実施できる国際組織は,国連が有効に機能していない現在,G7しかない。この点を看過し,あたかもサミットを一時のイベントと理解するようなことがあってはならない。