サミット(山頂=首脳会合)には中腹(大臣会合)がある!

なんども繰り返すが,G7は国連と並ぶグローバル・ガバナンスのメカニズムであり,その首脳会合がいわゆるサミットである。当然,頂上(サミット)の下では,サミットのアジェンダに入れられる前段階として,さまざまな分野のグローバルな政策課題が議論されている。

首脳会合を山頂にたとえるなら,山の中腹に位置するのは各種の閣僚会合である。今では首脳会合とは別の日程・別の場所で,議長国の判断でいくつもの閣僚会合が開かれている。他の国際機構や地域機構でも閣僚会合が開催されることはあるが,その頻度と多様性においてG7の枠組みを超えるものはない。

歴史を振り返れば,1975年から1998年までのサミットでは,財務・外務の両大臣が「助さん格さん」のように首脳の両脇に座って会議をすることがあった。その後,財務・外務の閣僚会合は別日程に移行し,さらにいろいろな政策分野の閣僚会合が開かれるようになった。そもそもG7サミットの議題は,時代状況を見据えて議長国が決めるのだから,前段階で各国の意見のすり合わせを行う閣僚会合の開催もかなり自由に行える。組織構造として柔軟なG7の真骨頂である。

まず,財務・外務で1990年代に当然のように毎年開催されるようになったのが,環境と雇用の閣僚会合である。とくに環境閣僚会合は,サミットがメンバー国間の経済政策の調整だけでなく,グローバルな問題にも積極的に関与するようになったことを示唆している。

さらに,2000年代以降になるとアドホックなものも含めて多様な閣僚会合が開催されるようになった。臨時的なものでは,過去に認知症だけ(2013年)やメディアの自由(2022年)をテーマとした閣僚級会合などが開かれている。

議題の多様化を背景にG7の閣僚会合は増えてきた!

近年では閣僚会合の種類が10を上回ることも珍しくなくなってきた。ただし,これには議長国による偏りが見られる。日本開催のサミットではとりわけ多いのである。2008年の洞爺湖サミットの8種類は当時の過去最多であり,2016年の伊勢志摩サミットの10種類も,2023年の広島サミットの15種類も同様である。ちなみに,広島サミットでは,首脳会合が行われた5月をはさんで,4月から12月にかけて以下の15の閣僚会合が各地で開催された。

・気候・エネルギー・環境大臣会合(札幌,4月)
・外務大臣会合(軽井沢,4月)
・労働雇用大臣会合(倉敷,4月)
・農業大臣会合(宮崎,4月)
・デジタル・技術大臣会合(高崎,4月)
・財務大臣・中央銀行総裁会議(新潟,5月)
・科学技術大臣会合(仙台,5月)
・教育大臣会合(富山・金沢,5月)
・保健大臣会合(長崎,5月)
・交通大臣会合(志摩,6月)
・男女共同参画・女性活躍担当大臣会合(日光,6月)
・司法大臣会合(東京,7月)
・都市大臣会合(高松,7月)
・貿易大臣会合(堺,10月)
・内務・安全担当大臣会合(水戸,12月)

おそらく,日本でサミットが開催されるときに閣僚会合が多くなるのは,サミット開催に名乗りをあげた自治体への配慮のほか,地方活性化などの政策的ねらいがあるからかもしれない。他国では首都や国際空港のある都市での開催も多いことを思えば,日本では「わが街にもぜひ」という自治体や地元出身議員の政治的働きかけなども奏功してきたのだろう。こうした結果,2023年には教育大臣会合が2つの県を移動しながら実施されるという滑稽な状況が生まれた。わたし個人は,広島サミットは核不拡散が重要テーマだったのだから,世界の非核教育の促進を願うなら広島か長崎で開催すればよかったのではないか,と思っている。

また,防衛省と総務省を除くすべての官庁が取り仕切る会合を持つことを見ると,多すぎるほどの閣僚会合の開催は,官庁間のライバル意識によってもたらされたものとも言えるかもしれない。国土交通省は交通大臣と都市大臣の2つのG7会合を受け持って満足だろうが,わたしが現地入りして見たかぎり,交通大臣会合のメディアセンターに外国人記者の姿はほとんどなかった。

本来,G7の閣僚会合は,関係国あるいは地球全体がかかえる課題の解決策を議論すべき場所である。地域の活性化や官庁の存在アピールばかり重視する招聘活動を見ると,日本の国際政治のセンスには,まだ磨き足りない点があると言わざるをえないだろう。

G7閣僚会合を「なんでもあり」で開催してはいけない!