カナナスキス・サミットはG7存続への試金石なのか?

2025年のG7サミット(主要国首脳会議)は、6月15日から3日間、カナダのカナナスキスで開催される。この会議は1975年に始まったので、今年で51回目だ。注目は、言うまでもなく、アメリカのトランプ政権のG7での振る舞いだ。とくに貿易の議論では、G7が「G6+1」の様相となる可能性が高いと言われている。これによって、主要国の国際協調のメカニズムとしてのG7の終焉を予感している人もいるのかもしれないが、わたしはそこまではいかないと思っている。

もちろん、制度化されている国際連合などとちがい、G7メカニズムは、参加者が変わることの影響が出やすい協議体(コンソーシアム)、あるいは緩やかな決まり事を頼りに運営される「国際レジーム」である。当然、一時的な有効性や存在意義のアップダウンは生じる。

トランプ政権がG7の結束を揺るがしかねない事態をもたらす可能性があることは否定しないが、かといってアメリカ1国の自己都合で主要国の政策協調体制を崩壊させることはできない。かりに議論が決裂して、トランプ大統領が席を蹴っても、G7が一時的にG6になるだけで、次の(あるいは次の次の)大統領選挙後にはまたG7に戻るだけだろう。 

この点、G7の政治的価値観を全否定したロシアが追い出されてG8がG7になったときとはちがう。いくらアメリカが自国中心主義になっても、基本的な政治的価値観においてはロシアや中国とは一線を画している。

G7はたしかに制度化された国際機関ではないが、それでも首脳会議のほかに財務や外務など各種の閣僚会議が定期的に開催されている。G7から抜ければ、アメリカは主要国間のあらゆる政策協議で発言力を失ってしまう。トランプ政権がこれまでG7の閣僚会議にきちんと参加していることから見ても、かりに他国のリーダーからの非難が集中したとしても、トランプ大統領がG7離脱を宣言するような事態には至らないにちがいない。

2025年のG7サミットは「G6+1」の雰囲気になるかもしれないけど、主要国の協調メカニズム自体の存続には影響ない!

とはいえ、すでに議長国のカナダは「首脳声明」のとりまとめをしないことを決めたと報じられている。首脳たちが意見の一致を経て実施を決めた政策について、いわば「国際公約」として発表する文書だ。対面開催までして共同声明の発出が見送られれば、G7では初の出来事となる。代わりに、個別の政策分野ごとの公式文書がいくつか出されるものと見られている。G7の閣僚会議では合意文書がつつがなく発出されているので、それに類したかたちになるのだろう。

「首脳声明」を出すなら、世界経済(特に貿易や途上国支援など)についての共通認識を示す必要がある。トランプ大統領が一方的にまくしたてる無駄な議論を避けるには、合意できる政策分野にかぎった文書をいくつか準備しておいて成果を積み上げていったほうが「現実的」ということなのだろう。

もし首脳声明が出なければ、G7サミットの歴史ではレアな出来事になる。他の公式文書でどこまでカバーできるかが問題だ!

第一次トランプ政権(2017年1月〜2021年1月)では、コロナ急拡大でオンライン開催になったものも含め、すべてのG7サミットにトランプ大統領は参加している。対面開催が見送られたのは、たまたまアメリカが議長国だったときのことだ。ちなみに、2027年のサミットもトランプ大統領が議長になる。

強調しておきたいのは、国際協調=チームワークのメカニズムとしてのG7、一国中心主義に自制をうながす機能ももつことである。言い換えれば、G7はトランプ大統領のわがままに「釘を刺す」ことができるレアなメカニズムでもある。アメリカ国内では「長」であっても、サミットでは「一員」にすぎない。アメリカは、国連の活動では財政的影響力を行使できるが、G7に対してはそういう力はない。

事実、2018年のシャルルボワ・サミット(カナダ)では、ドイツのメルケル首相がトランプ大統領に「ものもうす」シーンの写真が公開された。そのさい、安倍首相があいだに入って調整役を果たしたといった話まで聞かれた。

再任されたトランプ大統領は以前より強硬になっているかもしれない。だが、かといって、他の8人の政治家(EUリーダー2名を含む)がなにも言えず、トランプ大統領に唯々諾々と従うだけで会議が終わるとは思えない。政治・外交はときに「したたか」な本質をさらけだす。カナナスキスG7が、意外にも、大人たちが子どもをたしなめるような雰囲気になることだって、考えられないわけではないのである。

国際協調のメカニズムは、1国のわがままに振り回されることもあるけど、1国のわがままを抑制する機能ももっている!