カナナスキス・サミットで石破首相は活躍できるか?

2025年6月15日からカナダでG7カナナスキス・サミット(主要国首脳会議)が開催される。日本からは石破茂首相が参加する。初めてのサミットである。 

アメリカのトランプ政権が打ち出した強硬な関税措置をめぐる交渉が続くなか、石破首相は5月に「G7サミットを念頭に置きながら、今後さらに議論を進めていく」と述べた。わたしにはなつかしい響きがした。過去のいくつかのサミットの際、日本政府は首相が晴れ舞台で恥をかかないようにと、直前の日米首脳会談で貿易問題等の懸案解決を図ったことがあった。それが思い出されたのである。

日本の首相が国際的舞台で大きな役割を果たしたり、議論の主導権を握ったりすることは今も少ない。最近は、若き日々をアメリカで過ごした首相(岸田氏や安倍氏)が出てきているが、過去には英語で挨拶もできない首相がほとんどだった。残念ながら、日本の政治家には、与野党問わず、地元利益・業界利益の表出・調整が得意であっても、国際経験に乏しい人が多いのだ。

なので、多国間交渉におもむく首相に対し、外務省を中心に、官僚たちは周到な準備をする。日本の存在感が示せるように(=無視されないように)、そして非難されないように(=メンツが保たれるように)、というのが基本姿勢だと言ってよい。

G7サミットは多国間協議の場であるが、同時に多くの2国間協議が行われる外交の舞台でもある。とくに日本政府にとって、サミットはきわめて重要な日米交渉の場でもあった。首脳たちが集まる会議で批判されたくなければ、まず日米の二国間協議でアメリカ大統領に評価される政策を準備しなければならない、という図式になっていた。

日本にとってG7サミットは、多国間の政策協調の場であるだけでなく、日米の二国間協議の場としても重要だったんだよね!

この図式はサミットが始まって間もない1978年には早くも確立していた。アメリカの要求に基づき、福田首相はサミット直前の日米首脳会談で貿易黒字の削減を約束し、また工業製品の自由化について政治的妥結を図った。

1988年には竹下首相が、アメリカから市場開放を求められた牛肉・オレンジについての貿易交渉について、関係者・関係議員からの強い反対の声をよそに、「サミット前の解決を目指す」との意向を示した。そして実際、G7トロント・サミットの開催前夜、日米両政府は大筋で合意し、日本は牛肉・オレンジの輸入自由化に踏み切ったのである。

さらに例をあげれば、橋本首相は1998年のバーミンガム・サミットに向け、当時としては過去最大規模の総合経済対策をまとめ、そのための補正予算をサミット開始4日前に国会に提出した。アメリカが求めていた景気回復に向けた努力をはっきりとしたかたちで示すためだった。ただし、アメリカから不満が伝えられていた規制緩和については、首相が「サミットまでに」追加策を出すように指示したにもかかわらず、間に合わなかった。サミット時の日米首脳会談では、一部の前倒し実施で米側の理解が得られ、G7サミットの舞台で日本の首相が面罵される事態はなんとか避けられた。

ようするに、日本はこれまでG7サミットを時間軸に、アメリカの意向を受けて、経済政策を整えてきた。言い換えれば、外交圧力で内政の変更を強いられてきたわけだが、見方を変えれば、外交を利用して内政の行き詰まりを打破し、日本政治の利権構造を国際的に評価されやすいかたちに変える機会としてきた、とも言えるだろう。

日本は、外圧によって内政を歪めてきたのではなく、外交を利用して内政の行き詰まりを打破してきたのかもしれないね!

内部調和を重視する日本は外圧によってしか大きく変われない、という見方がある。そうであればなお、相互依存が当たり前の時代、外圧の巧みな利用は首相のワザの1つとなっていなくてはならない。

政策のキーワードに「地方創生」を掲げる石破首相に、はたして外交と内政をうまく手玉にとる技術があるのか。G7カナナスキス・サミットの見どころの1つに加えておこう。